熊に出合ったらどうしよう!と考える登山者は多いはず。鈴でもつけるしかないか!
兎に角、熊に出合った時の対処法を考えてみましょう。

私の50年以上の登山経験で、幸い至近距離で熊に遭遇したことはありません。
50mくらい先をを横切ったり、遠くにいる熊を見たことは何度かありました。全く恐怖感もありません。
ある意味ラッキーですね。事故事例を見てみると初めての登山でメジャーなハイキングコースで遭遇。怪我をなさった方もおられます。トラウマになってしまうでしょう。
熊は臆病な動物と言います。体長(頭から腰の後ろま)はツキノワで1~1.5m。ヒグマで1.5~2m。ツキノワグマは大型犬くらいの感じです。人間を見ると草むらなどに隠れてじっと通り過ぎるのを待っていると言われます。山行中、強烈な獣臭やクマザサの中から鼻息を聞いたこともあります。熊か猪かわかりません。
ゾッとします。日本国内で熊による負傷者は年間100件程度発生しています。残念ながら死亡事故も数件。幸いにも事故に至らなかったヒヤリハット事案は相当数あるでしょう。
熊の餌は堅果類(クリ、クルミ、ドングリ、トチノミなど)、フキなどの葉、昆虫類と言われ雑食動物です。木の実が少ない裏年は里山まで降りてくる頻度が高くなります。
昔は”熊の胆”が高価なためマタギにより熊の駆除が盛んで、生息数が激減したため、動物保護の観点から積極的駆除は行っておらず、たとえ捕獲しても山に返すという事をしています。人に危害を与えた熊のみ駆除をしますが、猟師も高齢化が進み、その上、動物愛護など社会的にも駆除には慎重にならざるを得ないのが現状です。登山者も今後ますます熊との遭遇機会が増えてくるものと思われます。登山でもめったに熊に出合わなかった時代は終わったのかもしれません。

熊被害はこで発生しているの

里山近郊の家庭菜園や果樹園での被害
山菜取りでの被害
登山、トレラン、渓流釣り、キャンプなどのアウトドアでの被害
山地に接する住宅地周辺での被害

実際に熊被害にあったときの状態
熊は強靭な腕で人の頭を攻撃します。実際にけがをなさった事例によりますと頭蓋骨を目まで持って行かれるような大怪我になると言います。ちょっと腕でひっかかれた場合も骨まで出るような大怪我必至です。

生息場所

北海道はヒグマ
本州はツキノワグマ
四国は少数で剣山近辺にいるらしいですが絶滅したとの話もあります。
九州はいないそうです。
年々生息域が拡大しています。

熊の一年

地域差がありますが概ね冬眠期+出産期12月から3月。一部は「穴持たず」と言われる冬眠しない熊もいるようです。雪の降る地方は雪穴、雪の降らない地方は岩穴やウロ(樹洞)など隠れる安全な場所で冬眠しています。
春4月から5月は熊の体力回復期でやせ細った体を回復させるための期間です。
6月から8月は活動期で特に6月は発情期、子連れ共に神経が高ぶっています。
9月から11月は冬眠の準備期間で木の実などを積極的に摂食する時期。

熊の活動時間帯

朝(4時から7時)夕(17時から19時)

熊の行動範囲

成獣の雄熊は活動が活発で30~70平方キロの行動圏。
縄張りは持たず単独行動をでエサを探して移動。
雄は1日に10km以上も移動する個体がある。
春から夏は比較的行動範囲は狭く秋は広い傾向がある。
襲うときの熊の速度は時速50km。
木の実などを求めて移動しますので、夏場は高いところで秋口は里などの低山域に降りてきます。
初秋は日本アルプスの3000m域にも高山植物の木の芽を食べるために出没するみたいです。

熊に出くわす条件

朝夕の薄暗い時。
霧の立ち込めている時。
沢の音によって人の気配に気づかない時。
登山道を歩いていて小熊と母熊との間を横切った。
曲がり角で熊と鉢合わせ。
風によって人のにおいが届かない場合。
足跡や新しい糞がある場合は要注意。
栗などの実のなる木の枝が折れて不自然に地上に散乱している所。
フキ、ウド、タケノコなどの食べ物がある所。
沢筋は移動、水飲みなどで遭遇可能性が高い。
テント場は平らな尾根上が多いので熊や猪の移動休憩する場所と符合しています。

熊に出合う確率を減らす

出来るだけ熊から先に気づいてもらう方法を考える。
・グループで声を出して歩く
・熊鈴を鳴らしながら歩く
・ラジオを鳴らして歩く
・いそうな場所でホイッスルや大声を上げる、物をたたいて音を出す
・爆竹などを鳴らす

熊に出会ってしまったとき

熊は目が悪いという話もあるようですが、実際は数百メートル先からでも見えているようです。
じっとしていれば気づかない事も多く、特に動くものに対して反応する様です。

熊の行動心理

50m以上離れている場合は刺激するようなことをしなければ、去っていく可能性がある。
20~50mは熊も緊張状態となる。
20m未満は熊も攻撃態勢をとることがある。

熊 遭遇 人の行動

50m以上離れている場合
人が先に熊を見つけた場合、ある熊の専門家によると人間が木になりきることだと言います。腰から下を木に重ね合わせると体が見えていてもじっとしている限り、人とは認識できないようです。

20mから50m範囲内

熊の行動に全神経を集中させてゆっくりと後ずさりをする。
後ろへ下がるときは出来れば熊の旨あたりを見ながらバックする。アメリカのレンジャーは”落ち着け””大丈夫だよ”など熊に声がけしながら後ずさりをすると言います。そして熊スプレーをゆっくり取り出す。木の裏に重ね合わせるように隠れ(熊から体が出ていてもかまわない)風向きを考え迎え風を出来るだけ避けるようにポジッションを取る努力を試みる。そしてじっとする。熊に目を合わせる方が良いというご意見もありますが私としては敵対心を出すよりも少し視線をずらした方が良いと感じます。目を凝視するあまり足を踏み外すなどで転倒すると逆に熊を刺激してしまいます。
熊がそれほど警戒態勢を取っていない場合は熊から距離を取ることが主眼となる。

20m以内に接近してきた

熊スプレーの発射準備をする。熊はこちらに向かってきても数メートルで止まり、また離れたあと再度向かってくるという威嚇動作を繰り返すこともあると言います。または止まらずに突進してくることも。生きた心地がしないと思われます。

熊と鉢合わせした場合

小熊と母熊の間に入ってしまった場合。即スプレー発射準備をする。一刻を争う状況です。熊スプレーは、熊専用の大型スプレーが最もよく、ツキノワグマは小型の催涙スプレーでも効果があるらしい。ただし小型のものは噴射時間が短く有効噴射範囲が近い。
熊の速度は時速40km。逃げても無駄。意を決してスプレーが機能することを信じて至近距離でスプレー噴射。状況は千差万別なので、その時々の熊の様子や足場の状態によって考えうる最良の方法をとることが大切。

熊スプレーの噴射方法

自分は可能な限り風を背から横風で。向かい風では自分に被る危険がある。
5m程度に接近するまで我慢が必要。
1秒程度の短連射で断続的に熊の鼻先をめがけて噴射する。
全噴射時間は6秒程度。

熊の声

おじいさんが”オイ”と呼ぶような声。
猫が鳴くような声は小熊。こういった声を聞いたら要注意。
また岩や草陰に潜んでいる場合もあり、50センチ程度の笹の密生しているところ所に隠れていたらまったく見えません。静かに引き返しましょう。

熊スプレーを購入した場合の注意点

熊スプレーを購入しても多くの登山者はザックの中に入れているのが現状。これでは持っていないのと同じです。持つ以上は腰ベルトかザックのショルダーハーネス、ウエストベルトに装着して、日ごろから間髪を入れず確実に操作できるように練習する必要があります。熊スプレーは熊だけでなく猪や野犬そして悪い人にも有効です。単独登山者、グループ登山、なによりも女性登山者程自己防衛も含めて持っておいた方が安心でしょう。

熊スプレー携帯上の注意

熊スプレーは安易に噴射できないようにロック機構がついていますが、意外にも簡単にロックが外れて暴発することがあります。毎年電車やバス、山小屋内での事故が起きています。要注意です。私はロックが外れないように二重安全装置を自作しています。
移動時や、山小屋などの人のいる場所では二重安全装置をかけておくことで誤発射を防げます。
また交通機関では安全装置をかけた状態で確実に発射しないことを確かめたうえで、ザックの中に入れておく位の慎重さが必要です。マイカー利用の場合もザックの中に入れておかなければ警察による職務質問を受けたときに問題が生じる恐れがあります。

熊スプレーを航空機に乗せることはできません

熊スプレーは危険物扱いになりますので、残念ながら航空機には手荷物扱いや機内持ち込み共にできません。事前にホテル等に送る必要があります。

山小屋で誤発射された経験談

山小屋でザックを置いた際に誤発射され、顔にかかったことがあります。
ヒリヒリと激痛がはしり瞬間的に息を止めたのですが、少し吸い込んでしまいました。咳が止まらずとにかく苦しい。目にも入り目が明けられない、涙はぽろぽろ。唐辛子成分なので無害とはいえ、しばらく苦痛でした。熊スプレーは油性です。水ではなかなか取れません。山では冷たい流水で洗い続けることしか方法がありません。この経験をしたお陰ですが、熊にも効果があると確信しました。実際に熊に遭遇した人の話でも絶大な効果があるという事です。納得しました。

熊鈴

使った方が良いと思います。登山用の熊鈴はいろんなものがあって、どんなものを選んだらいいか迷うところですね。熊は高周波の甲高い音に反応するようです。
カウベルのようなコロンコロンという音や鈴の音よりも、チーンチーンという音が聞き取りやすいそうです。熊鈴は不要な時に音を消せる装置つきが使いやすいです。

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投稿者

yamatano

1958年(昭和33年)生まれ 近畿の山々2,000m以下の低山のあらゆる尾根や谷からアプローチする山登りをしています。六甲山は250回以上、金剛山は400回以上、大峰、台高、鈴鹿の山々を主体に、登るブッシュハイカーです。