安全な登山の基本は「地図を読む力」
私の登山経験の中で、山地図ひとつをとっても時代の変化を感じます。
50年ほど前は、国土地理院の1/50,000地形図が全国を網羅しており、登山者の標準的な地図でした。その後、1/25,000地図が主流となり、陰影や立体感が加わった見やすい地図が登場。さらに『山と高原地図』など登山者向けの地図も普及しました。
そして近年、スマホとGPSの普及により、登山スタイルは激変しました。多くの登山者がスマホ片手に山に入り、迷いそうな場所では頭を下げて画面を見ながら右へ左へ歩く姿を見かけます。便利になった一方で、技術や知識に頼らず山に入る人が増え、遭難事故も増加しているのが現状です。
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最近見られる遭難の事例
- テープやトレースを頼りに進むも途中で迷う
- 北アルプスの秋、雪によりアイゼンなしで行動不能
- 疲労困憊による行動不能
- 自分の経験に合わない山域での遭難
- 気象知識不足による雷や悪天候での遭難
- 技術不足での滑落事故
- 無謀な挑戦(YouTuberのケースなど)
- スマホ依存による道迷い、電池切れ、地図紛失
- 自治体の道標に頼ったものの、読図力不足で迷い込む
これらは装備が充実しても起こる「初歩的遭難」です。遭難者を責めるものではありませんが、登山者自身に読図力やルート判断力が欠けている場合が多いのも事実です。
スマホ依存の危険
- 電池が切れたらどうするか
- 破損や紛失したらどうするか
- ヘッドアップ機能で進行方向を確認しているか
- 他者のトレースに頼りすぎて道を外れた場合のリスク
便利な技術に頼りすぎることは、かえって危険です。
遭難を防ぐために必要な力・装備
- 山行き計画力:万一の時のバックアップルートを含む
- 読図力:紙の地図を正しく読めること
- ルートファインディング力:地形を見ながら自分で判断する力
- 非常装備:細引き、スリング、ツエルトなど
- 行動食・水分:長時間行動に備える
- 救急用品:怪我や体調不良に備える
- 遭難時通信手段:ココヘリなど位置通知装置
安全登山の第一歩
結論として、安全な山行きの基本は地図が読めることです。
- 地図が読めない人は、バリエーションルートや人の少ない山域には入らない
- 推奨はスマホGPS地図+紙の地図の二刀流でのハイブリッド活用
便利な時代だからこそ、立ち止まって考え、自分の技量と装備に見合った山行を心がけることが、事故を防ぐ最も重要なポイントです。