登山中に「ちょっと一本立てよう」と言われたら、それは“休憩しよう”という意味です。

この言葉の由来は、昔の山小屋への物資運搬にさかのぼります。
今でこそヘリコプターで荷揚げするのが一般的ですが、以前は人力で荷を運ぶ歩荷(ぼっか)や剛力(ごうりき)と呼ばれる人たちがいました。彼らは背負子(しょいこ)に何十キロもの荷物を載せ、険しい登山道を登っていったのです。

背負った荷物は、一度下ろすと再び担ぎ上げるのがとても大変。そこで、杖(現在でいうトレッキングポール)を背負子のフレームに立てかけて荷の重さを逃し、そのままの姿勢で休んでいました。これが「一本立てる」の語源です。

仲間内で「ここで一本立てよう」と声をかければ、「ここで休憩しよう」という合図になりました。地域やグループによっては「一本入れる」「一本とる」とも言われます。

今ではほとんど使われなくなった言葉ですが、かつての山の風景や登山文化を伝える貴重な山用語のひとつです。

投稿者

yamatano

1958年(昭和33年)生まれ 近畿の山々2,000m以下の低山のあらゆる尾根や谷からアプローチする山登りをしています。六甲山は250回以上、金剛山は400回以上、大峰、台高、鈴鹿の山々を主体に、登るブッシュハイカーです。

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